『パリの日本建築(1967-2017)』展
私が二十歳くらいの時には、「結婚相手の職業にしいて希望を言うならば、建築家とかいいな」とぼんやり思っていた。
芸術系と理系を足して二で割ったようなところがいい。コンセプチュアルに物事を発想するセンスと実際に具現化するための現実的なアタマが必要なところがいい。アーティスト的な要素がありつつ、一般社会で生計を立てていけそうだ。
ついに建築家とは結婚できなかったなぁ、と『パリの日本建築(1967-2017)』展(Pavillon d'Arsenal/4区)に行きながら思った。
それにしても、パリで活躍する日本人建築家は多い、という印象だったけれど、それを全て見せてくれるような素晴らしい企画展。安藤忠雄、坂茂、妹島和世、藤本壮介など、新聞でも日本の建築家の名前を目にすることは多い。そのフランスと日本の建築の交流史を遡ると、1928年にル・コルビジュエのアトリエに前川國男、坂倉準三が学びに来るところまで遡るそうだ。(ちなみに私はこの二人の建築家は存じ上げませんでした。戦後に活躍した建築家だそう。)
1980年代頃から、日本人建築家はフランスのコンペに積極的に応募するようになり、1990年代初めに日本人建築家により大規模な建築が手がけられるようになる。丹下健三、黒川紀章、安藤忠雄が活躍するようになったのはこの頃から。
その後、日本建築の評価が高まるにつれ、坂茂、伊東豊雄、隈研吾、山本理研、アトリエ・ワン、SANAAといった世代が続く。
企画展では、実際には実現しなかったコンペ案から、これから実現予定の模型まで紹介されている。安藤忠雄をピノーに紹介したのラガーフェルトだとか、いつ開くんだ?と気になっていたグランマガザンをSANAAが手がけていると知ったり、とても楽しかった。今後、完成が待たれるのはこちら。
・Bourse de Paris(安藤忠雄)
・Mille Arbres / Réinventer Paris(藤本壮介)
・Grand Magasin Samaritaine(SANAA)
・Gare de Saint-Denis Pleyel(隈研吾)
パリ近郊で竣工しているのはこちら、近くを通りがかった時には少し立ち止まって見てみたい。
・Jardin de l'Unesco (1958/イサム・ノグチ) 今は一般公開していないよう。。
・Tour Pacific, La Défense(1992/黒川紀章)
・Grand Ecran(1992/丹下健三)
・Espace de méditation pour l'Unesco(1995/安藤忠雄)
・Nouvel hôpital Cognacq-Jay(2006/伊東豊雄)
・Restructuration du siège social de Sysla(2010/隈研吾)
・Autrement rue Rebière, logements(2012/アトリエ・ワン)
・Pôle multi-équipements Macdonald(2014/隈研吾)
・Seine musicale, Île Seguin(2017/坂茂)
すっかり満足して、帰り際には企画展の本も買ってしまった。辞書かと思うくらいぶ厚い。裏表紙には、プロジェクトのリストあり、中はビジュアルや対談が豊富。しかも全てフランス語と日本語併記。翻訳者の方の苦労が偲ばれて、思わず名前を確かめてしまった。(谷口円香さん、お疲れ様でした。)
結構高いんだけれどとてもいい買い物をした。