Paris 2014 + 3

2014年に「パリに引っ越しました」(旧ブログタイトル)。3年目の私的メモ。

ハッピーエンドの「その後」を描く『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』(原題:Casse-tête chinois)

日本にいる母の方が、パリにいる私より、フランスの時事ネタに強いのはなぜなんでしょう。我が家には、テレビもなく、もちろんラジオもなく、もちろん新聞も取っていないので、ぼーっとしていると何が起こっているか気づかないままです。

一方、60歳になろうという母は、毎日NHKワールドニュースで、仏France2やら、英BBC、米CNNでトップラインニュースくらいは押さえておくという意識の高さです。本当に頭が下がります。

 

時事アップデートでは追いつけない私ですが、私が圧倒的に有利な分野があります。フランス映画です。日本でフランス映画が公開される場合、権利関係、翻訳、PRなどに時間がかかるため、大抵1年くらいのタイムラグができます。

先日、母が「先週から、文化村でロマン・デュリスの映画やってるわよ」と教えてくれたときにも、「あ、それ知ってる」と珍しく返せるトピックだったのです。

そんなわけで、『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』(原題:Casse-tête chinois)が東京で公開されていると知りました。第一作『スパニッシュ・アパートメント』(原題:L'Auberge espagnol)、第二作『ロシアン・ドールズ』(原題:Les Poupées russes)に続く、クラピッシュ監督のシリーズ第三作です。

結論から言うと、この映画すごくいいんです。お近くの方は是非観に行ってみて下さい。

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前作までの流れを簡単に説明すると、パリの大学生の主人公グザヴィエは、バルセロナで一年間の留学生活を送ります。ヨーロッパ各地から集まった留学生7人とのカオスなシェア生活を綴った『スパニッシュ・アパートメント』。人生のモラトリアム期間も、留学生活を終えると、約束されたキャリアを選ぶか、自分の心の声に耳を傾けるか、という決断をしなくてはならない。カオスなシェア生活のごとく、ぐちゃぐちゃでもやもやして混沌とした青春を描きます。

 

第二作『ロシアン・ドールズ』は、キャリアを歩みだしたグザァビエが次にぶつかる壁、「愛」「パートナー」がテーマ。「自分が人生を共にするパートナーは、この人しかいない!」という確信をどう得るのだろう、と煮え切らない。マトリョーシカ人形さながら、これで最後か?と思っても、まだ入れ子になっていて、最後の一人に辿り着けない。アラサーのラブストーリー。

 

そして、第三作『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』は、いわば、ハッピーエンドの「その後」で、40歳になったグザヴィエを描いています。「結婚は人生のゴールじゃない、スタートだ」を如実に語ります。人生は思った通りには行かない。

事実婚のパートナーであるウェンディから別れを宣告され、子供ふたりもニューヨークに連れていくと、押し切られるグザヴィエ。

別れたパートナーと子供との関係の在り方、レズビアンカップルの子供問題、連れ子同士で新たな家族の構築、21世紀型家族のモデルがふんだんに盛り込まれています。そんなマンハッタンのチャイナタウンを舞台に、複雑に入組んだ人生を描く。

それを象徴する原題:Casse-tête chinois(米題:Chinese Puzzle)なのだが、邦題にはそのDNAが全く反映されていない。翻訳者の方も悩んだろうなぁと思いますが、イケてない。まぁ『チャイニーズ・パズル』では、まさかフランス人がマンハッタンを舞台にどたばたする話だとは、思わないでしょうしね、仕方ないか。でも、原題をわかって観ると、本編の中の会話がより一層理解できると思います。

 

私は、ちょうどニューヨークとパリを行き来する生活だったこともあり、私がぶつかってきた壁をよく捉えてるシリーズなので、飛行機の中で3回観てしまいました。